六弦的魔力証

2005年03月04日 郵便の発送は行われた!


この幻を追い続け29年目。

「出品者を成敗するだけだ

2002年冬、11月22日にその悪夢は始まった。押し寄せる「嘘」と「反故」の嵐!あの日、Martin D-45をWEBオークションで落札した瞬間から、倉庫 番(くらこ つがい)はオークションの裏で蠢く深い闇に巻き込まれ、苦悩が始まった。以来、納品されることなく、返金されることなく日々は過ぎて行った。自ら招いた災いであると後悔の日々が続いた。やがて状況の裏側が見え始めた時、倉庫 番は戦い抜く意志を持ち始めたのだった・・・。これは、平成不況から脱しようともがく日本経済の逆風の中、果敢に謎に立ち向かっていった男の、足掛け4年目に突入した、今日も続くドラマである!


♪〜〜〜風の中のす〜ばる〜〜〜〜〜〜♪


私家版

プロジェクト
HEX(ヘックス)
「D-45を追え!証明編」

運命の期限である2月25日15時。倉庫 番は出品者に伝えていた銀行口座をWEBでチェックした。出品者から振り込まれるはずの金額は1円も存在しなかった。限界・・・。倉庫 番はゆっくり立ち上がり・・・東京高等地方簡易裁判所合同庁舎へ向い歩き出した・・・。

JR山手線「有楽町駅」で降りると、倉庫 番(くらこ つがい)は桜田門を目指した。日比谷公園の前を通過し、警視庁が見えて来た。桜田門交差点を左に曲がると、そこには司法関係のビルが並んでいた。2つめのビルが目的の東京高等地方簡易裁判所合同庁舎だった。大きなビルだ。門を入ると警備員の目が鋭く突き刺さってくる。ビルの入り口には荷物検査の装置が用意されていた。空港の手荷物検査と同じシステムだ。

「ポケットの中に大きな金属性のモノはお持ちではないですか?」と番号札を渡されて、倉庫 番のショルダーバッグは検査機の中に吸い込まれて行った。ボディーチェック用のゲートを潜り、番号札と引き換えにバッグを受け取る。倉庫 番は事前にWEB検索で見つけていた東京高等地方簡易裁判所合同庁舎の内部構成を思い出していた。地下に郵便局が存在するはず。

倉庫 番はエレベータを探した。その途中で階段室を見つけた。1階分降りるだけだと、階段室へ向かった。階段室から出ると、20m程で「東京高等裁判所内郵便局」に辿り着いた。倉庫番が目的としていたのは「裁判所」ではなく「郵便局」だった。普通の郵便局ならどこにでもある。ここを目指したのは何故か?内容証明郵便を出すためだった。

「内容証明郵便」とは、郵便局に持ち込まれた同じ文面の3通を、送信用、発信者控え用、そして郵便局の保管用とし、郵便局が第三者として確かに発信者が送った文章であると証明しつつ1年間預かってくれるシステムだ。日本と台湾にだけあるシステムなのだ。さらに「内容証明郵便」は速達として発送されるので、受け取る側は本人の捺印が必要だ。このため
確かに相手が受け取ったとの証明書も発行してくれるのだ。受け取った証明書はハガキで届けられる。これが裁判等に発展した場合、公的な証拠として役立つのだ。

だが、内容証明郵便はどこの郵便局でも扱ってくれるわけでは無い。かなり大きな郵便局でしか手続き出来ない。倉庫 番は「内容証明郵便」についてWEBで調べていた時、面白い情報を掴んだ。「内容証明郵便」そのものに法的な効力はまったく無い。単に、発信者の要求を突き付けるだけの文書である。例えば「何年何月何日までに、¥●●万円を返金しなければ法的処置で対処する」等の強い主張の通告をする文章になりがちである。「内容証明郵便」を送りつける状況はたいていの場合「我慢の限界!喧嘩腰!」であるため、受け取った側も送信人が「本気」
であると認識させられるのだ。

そのため相手がかなり舐めていて長期化していた場合でも「内容証明郵便」が送りつけられた時点で「すみません!すぐ払います!」 といきなり解決してしまうケースが多いのだという。しかし、これは「金を返さないと法的対処をする」という通告だけであり、この「内容証明郵便」そのものには法的効力が無い事を知っているシブトイ相手の場合には、裁判まで持ち込まないとなかなか解決までの道のりは難しい事になる。

そこで「内容証明郵便」をさらに強く印象付け、法的な根拠がありそうな錯覚を生むテクニックは無いのか?倉庫 番が発見したのは「東京高等裁判所内郵便局」の存在だった。「内容証明郵便」はその文面の最後に、受け付けた郵便局の承認印が押され、その文面が送られる事を確認した旨の受付番号が付される。その際、郵便局名がくっきりと文末に押印されるのだ。今回のケースで言えば郵便局でありながら「東京高等裁判所内郵便局」と裁判所名が頭に付くのだ。

冷静に考えればそれは「郵便局名」であり「裁判所名」ではない。だが、これで充分に相手に錯覚をもたらす事ができると考えられる。いままで、出品者に送りつけられた「内容証明郵便」がどのような郵便局から発送されたかは知らない倉庫 番だが、なんらかの効果が少しでも出ればとの思いだったのだ。さらに、わざわざ「東京高等裁判所内郵便局」まで出かけ、内容証明郵便の手続きをできるのは限られた地域の人々だけだ。倉庫 番は地の利をフル活用したかったのだ。

そして、もうひとつ根拠があった。たとえ相手が「たかが郵便局名」であると知っていたとしても 、裁判所のビルに倉庫 番が足を運んだのは事実である。たまたま今回は地下にある郵便局を利用したのだが、ちょっと上の階に行けばすぐに裁判へ持ち込み強制執行も可能となるのだ。その部分に気付けば、出品者はなんらか動き出さないわけには行かないだろう・・・。

郵便局入り口には「4時を過ぎると内容証明郵便受付は込み合います。なるべく早めにお越し下さい」と表示されていた。すでに16時は過ぎていて、先客が5名待っていた。順番が回って来るのを番号札を受け取りつつ待った。やがて倉庫 番の受付が始まった。文面の書式は何度も確認していたので問題は無いはずだ。が・・・ひとつだけヒッカカル部分が出て来た。

問題は封筒に書いてある受取人の名前だった。中に入れる文面の住所氏名とまったく同じにしなければならなかったのだ。文面には「旧姓」まで書き加えていたのだ。そこで封筒に「旧姓 高■殿」と一行書き加え受理してもらった。そして、いよいよ係員の目の前でその封筒に、承認印が押された文面を入封印する。ここまで係員が目で確認するのは、発送した文面と保管用の文面がすり替えられるのを防ぐためである。やがて全ての処理が終わり、倉庫 番は東京高等地方簡易裁判所合同庁舎を後にした。その日「内容証明郵便」は出品者へ向け発送された・・・。

2005年3月2日。倉庫 番が帰宅してみると、出品者が内容証明郵便を受け取ったとの証明ハガキが届けられていた。やはり受取人の名前は「高■」ではなく「石■」となっていた。これで本名も確定。基本的な攻撃準備体勢は整ったはずだ。倉庫 番が送りつけた内容証明の文面は以下のような意味合いのものであった。

● 2005年3月4日までに、商品「M●rtin D-45 AJ」納品及び、
  申し出でがあった遅延詫金10%の¥43,800-の振り込みを行って下さい。

  なお、期日までに商品の手配が不可能な場合は、商品代金¥438,000- に
  遅延詫金として商品代金10%の¥43,800-を付加し、
  合計481,800-を下記口座に振り込んで下さい。
  
  2005年3月4日までに上記を実行されない場合は、法的対処を開始致しますのでご了承下さい。

すでに神●川県警には被害届が出されている。岡▲県警も動き出しているはずだ。さあ、出品者はどう動くのだ?

被害届を出して1週間目の3月3日の時点で、倉庫 番へはまだ神●川県警からの被害届受理の連絡は来ていなかった。ヤ●ーオークションの被害届がそれ程多数出されている現実があるのだろう。それが受理されない限り、本格捜査はスタートしないのだ。倉庫番は先週出品者へ「神▲川県警に被害届を出した。警察からの連絡を待て。あるいは裁判所からの呼び出しを待て」とメールを送っておいた。だが、それへの反応はまだ無かった。同時に、ID「love」の評価にはますます「悪評」が増え続けていた・・・。明らかに被害者数増大!だが、その中にわずかに解決しているケースも出始めていた・・・。

2005年3月4日。関東地方は深夜から大雪が降り続いていた。神奈川県の丘陵地帯にある倉庫 番の自宅の窓から見える景色は、すっかり雪国に変わっていた。倉庫 番はいつもであれば駅まで妻の車で送ってもらうのだが、この日、妻は駐車場から車を出す事さえ出来なかった。出勤の足は大幅に乱れた。降りしきる雪の中、バスが来るのを待つ倉庫 番であった。


始業時刻に10分遅れで出社した倉庫 番は、まずコーヒーを飲みつつ日課のメールチェックから始めた。すると、多数のジャンクメールの中に出品者からのメールが届いているのを発見した。「内容証明郵便」を受け取ってあわてて対策を考えたとでも言うのか?

2005年3月4日出品者からのメール

おはようございます 遅れて 申し訳ありませんでした
月曜日に 送金させていただきます が 全額は 困難です
今月 一杯かかると 思いますが よろしく お願いします

足掛け4年に渡り届き続けた内容となんら変わりは無かった。要するに内容証明で送りつけた期日に振り込めないと言いたいだけか。まあ、今となっては手後れである。すでに被害届は出されたのだ。この後は、ただ粛々と国家権力の力を借りて出品者を成敗するだけだ。そこに倉庫 番の感情の揺れはまったく無くなっていた。時間が経ち過ぎているのだ。

2005年3月4日
11時過ぎ、勤務先へ1本の電話が掛かって来た。デスクが電話を受け、なにやら問いただしている。倉庫番に掛かって来る営業電話は、デスクが撃退してくれるのだが・・・その会話の合間に「岡▲」の地名が倉庫 番の耳に聞こえて来た。久々に来たか・・・。

「岡山の高■という方から、メールをもらったのでと掛かって来てますが?どうします?」

「わかった。私が出ます!」

いつ以来の出品者からの電話なのだろうか?あの内容証明にあった「東京高等裁判所」の文字が効いたのだろうか?倉庫 番ゆっくり受話器を取り上げた・・・。

「倉庫です!」


*このストーリーは、現実をモチーフにしたフィクションであり、
 登場した個人名、団体名、地名、商品名等は架空のモノです。
 ひょっとして実在するかも知れませんが・・・!(なんだよそれ?)



本日の結論
神▲川県警からの連絡が待ちどうしいなあ・・・。

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